耐震等級とは

耐震等級は、建物が地震にどれだけ強いかを3段階で表す指標です。国の住宅性能表示制度で決められていて、第三者の評価機関が図面と現場を確認して等級を付けます。

  • 等級1:建築基準法で最低限求められる強さ。数百年に一度程度の大きな地震でも、倒壊や崩壊をしない
  • 等級2:等級1の1.25倍の地震の力に耐える
  • 等級3:等級1の1.5倍の地震の力に耐える

国の施設の耐震基準では、避難所になるような施設に1.25倍、消防署や警察署のように災害時の拠点になる施設に1.5倍の強さが求められており、等級2・3はそれに近い水準です。

注意したいのは、等級1の「倒壊しない」は、中にいる人の命を守るという意味だということです。大きな地震のあと、ひび割れや傷みなく元どおり住めることまでは約束していません。

また、住宅性能評価を受けるかどうかは売主の任意です。評価を受けていない建物には等級の表示がありません。建築基準法は満たしているので、等級1相当と考えるのが一般的です。

マンションはほぼ等級1、戸建は等級3が主流

住宅性能評価・表示協会がまとめている、2024年度に建設住宅性能評価書が交付された新築住宅の集計を見ると、マンションと戸建でまったく逆の結果になっています。

耐震等級の取得状況(鉄筋コンクリート造の共同住宅と戸建)

等級1等級2等級3評価対象外
鉄筋コンクリート造の共同住宅92.2%2.2%0%5.6%
一戸建て0.6%1.3%97.7%0.5%

鉄筋コンクリート造の共同住宅は9割以上が等級1で、等級3は1戸もありません。性能評価を受けた戸建は、9割以上が等級3です。評価対象外は、主に免震構造のマンションです。免震は揺れそのものを建物に伝えにくくする仕組みなので、耐震等級とは別の方法で評価されます。

鉄筋コンクリート造の数字には分譲と賃貸の両方が入っていますが、同じ構造なら設計の考え方は変わりません。木造や鉄骨造も含めた共同住宅全体では等級3が5.4%ありますが、ほとんどがハウスメーカーの鉄骨プレハブや木造の賃貸アパートです。賃貸が混ざることで増えているのは等級2・3の側で、マンションの等級を実際より低く見せているわけではありません。

性能評価を受けていないマンションも、等級1相当と見てよいです。等級2や3で設計しても、評価を受けなければ正式に等級を名乗れず、地震保険の割引も受けられません。上の等級で建てたのに評価を受けない理由がないので、評価を受けていないマンションを足しても、等級1の割合は下がりません。ただ、等級1は設計の目標が建築基準法の水準だという意味で、実際にどれだけ余裕があるかは建物ごとに違います。

※性能評価を受けた住宅だけの集計です。設計段階で性能評価を受けた戸建は、2024年度の新築戸建約35万戸のうち約13万戸で、4割弱です。評価を受けるのは性能を売りにしたい住宅が多いので、戸建全体で見ると、等級3の割合はこの表より低くなります。

新築全体で見た内訳

上の表は、性能評価を受けた住宅だけの割合です。2024年度の新築全体について、性能評価と長期優良住宅(耐震等級2以上が条件)のどちらを使ったかを分け、そこから等級が確定している割合を推計すると、次のようになります。

制度の使い方戸建(約35万戸)分譲マンション(約10.5万戸)
性能評価と長期優良住宅の両方24%0〜2%
性能評価だけ14%73〜75%
長期優良住宅だけ16%0〜8%
どちらもなし46%17〜25%
等級戸建分譲マンション
等級3が確定37%0%
等級2が確定0.5%2%
等級2以上(長期優良住宅だけで、2か3かは不明)16%0〜8%
等級1が確定0.2%69%
評価対象外(免震など)0.2%4%
等級が分からない46%17〜25%

戸建は、等級2以上が確定しているのが半分強で、等級3が確定しているのは4割弱です。残りの半分近くは等級が分かりません。分譲マンションは7割で等級1が確定していて、等級3はほぼありません。等級が分からない2割前後も、上に書いた理由で等級1相当と見られます。

※性能評価の件数は設計段階の評価書で数えています。同じ年度でも着工と評価は同じ建物とは限らないため目安です。等級の割合は、完成時の性能評価の集計(戸建は一戸建て全体、分譲マンションは鉄筋コンクリート造の共同住宅)を当てはめた推計です。共同住宅の長期優良住宅は分譲と賃貸の内訳が公表されていないため、幅で示しています。

数字だけを並べると、マンションは戸建より地震に弱いように見えます。

マンションが等級1である理由

鉄筋コンクリート造のマンションを等級3にするには、地震の力を1.5倍受け止められるよう、柱や梁を太くし、壁を増やす必要があります。その結果、次のようなことが起こります。

  • 部屋が狭くなる:室内に出っ張る柱や梁が大きくなり、同じ広さの住戸でも使える床面積が減ります
  • 窓が小さくなる:壁を増やす分、窓やバルコニーの開口を大きく取れなくなります
  • 間取りの自由度が落ちる:動かせない壁が増え、リフォームで壁を取り払うこともしにくくなります
  • 価格が上がる:建物が重くなるので、基礎や杭も大きくなります。同じ敷地に取れる住戸の面積も減り、1戸あたりの価格は上がります

柱が太くて部屋が狭く、窓も小さく、そのうえ価格も高い。そういうマンションを選ぶ人はほとんどいないので、売主も等級3にはしません。マンションが等級1なのは、住み心地と価格とのバランスを取った結果です。

一方、木造の戸建は建物が軽く、等級3にするための追加は、壁の量を増やし、金物を強くする程度で済みます。費用の上乗せが小さく、地震保険の保険料も等級3なら半額になるので、等級3が標準になりました。

なお高さ60mを超えるタワーマンションは、地震の揺れを時間ごとに細かく計算する方法で設計し、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。この方法でも、地震の力を割り増して計算すれば制度上は等級2・3を取れますが、実際は等級1か、性能評価を受けないものがほとんどです。高さによる確かめ方の違いは戸建とマンションで構造計算はどう違うかで解説しています。

それでも戸建で等級3を選ぶ理由

ここまで読むと、等級1でも命は守られるのだから十分ではないか、と感じるかもしれません。それでも戸建で等級3を選ぶのには、次の理由があります。

  • 地震のあとも住み続けられる:等級1が約束するのは倒壊しないことまでです。熊本地震で震度7が2回起きた益城町の中心部では、2000年以降の基準で建てられた木造住宅(多くは等級1相当)のうち無被害は61.4%で、2.2%(7棟)が倒壊しました。耐震等級3の16棟は14棟が無被害で、残る2棟も軽微または小破にとどまりました
  • 大きな揺れが続いても余裕が残る:1回目の大きな揺れで傷んだ建物は、次の揺れで倒れやすくなります。等級3の1.5倍の強さは、この2回目、3回目の揺れへの余裕になります
  • 年月で目減りする分を先に上乗せできる:木造は、次の章で書くように接合部が少しずつ緩んで強さを失います。新築時に1.5倍にしておけば、目減りしても基準を下回りにくくなります
  • お金の面でも得をする:地震保険料は等級3で50%割引(等級1は10%)になり、フラット35の金利が下がるフラット35S(金利Aプラン)の条件の一つにもなります

木造の戸建は安心か

等級3の木造戸建でも、安心しきれない理由があります。木造と鉄筋コンクリート造の決定的な違いは、接合部があるかどうかです。

木造の接合部と鉄筋コンクリートの一体構造

木造は、柱や梁、土台といった木の部材を、金物やボルト、釘でつないで組み立てます。部材そのものが強くても、つなぎ目の金物が外れたり緩んだりすれば、そこから建物は崩れます。2016年の熊本地震を調べた国の報告でも、2000年以降の基準で建てられた木造住宅が倒壊した原因として、接合部の金物が適切に付いていなかったことが挙げられています。

前の章のとおり、熊本地震では等級3の効果ははっきり出ています。それでも安心しきれないのは、接合部が繰り返しの揺れと年月で傷んでいくからです。大きな揺れを受けるたびに、釘やビスは少しずつ効きが弱まり、ボルトの穴は広がり、金物のまわりの木はめり込みます。耐震等級は新築時の強さを表す数字で、何度も揺すられた後や、何十年も経った後の強さまでは表していません。

鉄筋コンクリート造では、木造のように金物が緩んで少しずつ固さを失う形の劣化は起きにくくなっています。柱と梁は鉄筋を通して一度にコンクリートを流し込み、つなぎ目のない一体の構造としてつくるためです。ただし、大きな地震でひび割れが入ったり鉄筋が伸びたりすれば、繰り返しの揺れで固さや強さは落ちていきます。熊本地震を調べた同じ国の報告でも、新耐震基準(1981年6月以降)で建てられた鉄筋コンクリート造の建物で、倒壊が確認されたものはありませんでした。

新耐震のマンションが大きく壊れた例

新耐震基準のマンションが倒壊した例は、これまでの大地震でもごく少数です。阪神・淡路大震災では、新耐震の建物の被害は全体として少なかったものの、1階が駐車場などで壁の少ないピロティ形式の建物を中心に、大破したものが少数ありました。

一方で、倒壊はしなくても住めなくなった例はあります。熊本地震では、1987年分譲のグランピアニュースカイ前マンション(熊本市・11階建て)の南棟が大きく傾き、外壁タイルのひび割れや、玄関扉が開きにくい住戸も出て、罹災証明で全壊と判定されました。ジャッキアップで傾きを直す案も検討されましたが施工が難しく、建て替えになっています。東日本大震災の宮城県のマンション被害では、新耐震か旧耐震かの違いよりも、建っている土地の地盤の良し悪しが被害の大きさを分けたと分析されています。

まとめ

耐震等級は3であるに越したことはありません。ただ、耐震等級は同じ構造・同じ計算方法の中での倍率なので、構造の違う戸建とマンションの強さを、等級の数字だけで比べることはできません。

等級1のマンションが安心できないわけでもありません。これまでの大地震でも、マンションが建て替えが必要になるほどの被害(大破)を受けた例はごくわずかです。東日本大震災では東北6県の1,642棟で大破はゼロ、熊本地震では熊本県内の566棟のうち大破は1棟でした。

この事実を踏まえて、耐震性をどこまで重視するかは、買う人それぞれの判断です。戸建を選ぶなら、等級3を選び、定期的にインスペクションを受けて接合部の緩みや劣化を点検しながら住み続けるのが、最も安心できる選び方です。

(主な参考:住宅性能評価・表示協会「建設住宅性能評価書(新築)データ」令和6年度・「住宅性能表示制度の普及率の推移」・「長期優良住宅制度に係る審査実績戸数」・「設計住宅性能評価書の交付を受けた住宅の属性概要」、国土交通省「長期優良住宅の認定状況」令和6年度・「建築着工統計調査」令和6年度計、国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書、日本住宅性能表示基準、東京カンテイ「東日本大震災 宮城県マンション被害状況報告」、グランピアニュースカイ前マンション建替事業の公表資料、損害保険料率算出機構 地震保険の割引制度、住宅金融支援機構【フラット35】Sの技術基準、高層住宅管理業協会「東日本大震災 被災状況調査報告」、マンション管理業協会 熊本地震の被害状況調査)