鉄筋コンクリートは、コンクリートの中に鉄の棒(鉄筋)を入れて一体にした材料です。橋やトンネル、ダム、学校や病院など、身の回りの大きな建物や土木構造物の多くがこれでできています。

マンションも同じで、日本の分譲マンションのほとんどは鉄筋コンクリート造(RC造)です。柱や梁を鉄骨で組む鉄骨造(S造)の建物でも、床にはコンクリートを流し込み、建物を支える基礎は鉄筋コンクリートでつくります。木造の戸建でも、家を載せている基礎は鉄筋コンクリートです。構造の種類にかかわらず、建物の足元にはほぼ必ず鉄筋コンクリートがあります。

鉄筋コンクリートの特徴

  • 耐久性:きちんとつくれば長く持ちます。日本建築学会の工事標準では、一般的な建物で65年、長期仕様で100年、超長期仕様で200年という使用期間の目安が示されています。
  • 耐火性:コンクリートは燃えません。熱も伝わりにくいので、火災のときに中の鉄筋が高温になるのを防ぎます。鉄は熱に弱く、600℃前後で強度が半分ほどに落ちるため、コンクリートで包んで守る働きは重要です。
  • コスト:材料のセメント・砂・砂利・鉄はどこでも手に入り、材料費は安い部類です。一方で、型枠を組んでコンクリートを流し、固まるのを待つ工程があるので、工期は鉄骨造より長くなります。

鉄筋とコンクリートは相性がいい

鉄筋とコンクリートの組み合わせの良さには、材料がもともと持っている性質によるものと、人が工夫して引き出しているものがあります。

材料そのものの相性

  • 強い方向が逆:コンクリートは押しつぶす力(圧縮)には強いものの、引っ張る力には弱く、引っ張りの強さは押しつぶしの強さの10分の1程度しかありません。鉄は引っ張りに強い一方、細い棒のままでは押されると曲がってしまいます。お互いの苦手を、相手が得意としています。
  • 温度による伸び縮みがほぼ同じ:物は温まると伸び、冷えると縮みます。この伸び縮みの割合(線膨張係数)が、鉄筋とコンクリートはどちらも1℃あたり約10万分の1で、ほぼ同じです。夏と冬で伸び縮みしても両者がずれず、一体のまま動けます。
  • コンクリートが鉄筋を錆から守る:コンクリートは強いアルカリ性(pH12〜13)で、その中にある鉄筋の表面には不動態皮膜と呼ばれるごく薄い膜ができます。この膜があるあいだ、鉄筋は錆びません。
  • コンクリートが鉄筋を熱から守る:燃えず熱を伝えにくいコンクリートが、熱に弱い鉄を包むことで、火災のときも鉄筋の温度が上がりにくくなります。
  • 固まる前は液体:コンクリートは型枠に流し込むときには液体なので、鉄筋のまわりを隙間なく包み込めます。
  • 自然にくっつく:固まったコンクリートと鉄筋の表面は、化学的にもある程度くっつきます。さらにコンクリートは固まりながら少し縮むので、中の鉄筋を締め付け、摩擦でも離れにくくなります。

圧縮と引っ張りの分担は、梁で考えると分かりやすくなります。梁の上に重さがかかると、梁は下向きにしなり、上側は押し縮められ、下側は引き伸ばされます。押される上側はコンクリートが受け持ち、引っ張られる下側には鉄筋を入れて受け持たせます。

梁にかかる圧縮と引っ張り

人の工夫で性能を上げている部分

材料の相性だけでは足りない部分を、設計と施工で補っています。

  • 異形鉄筋で付着力を上げる:自然にくっつく力と摩擦だけでは、大きな力がかかると鉄筋がずるっと抜けてしまいます。そこで表面に節(ふし)やリブと呼ばれる凸凹を付けた異形鉄筋を使い、凸凹をコンクリートに引っかけて力を伝えます。昔は表面がつるつるの丸鋼が使われていましたが、いまの建物の鉄筋はほぼ異形鉄筋です。
  • 定着と継手:鉄筋の端は、決められた長さだけ柱や梁の中に埋め込んだり、先を折り曲げたりして抜けないようにします(定着)。鉄筋どうしをつなぐときも、一定の長さを重ねたり、圧接や機械式の継手でつないだりして、一本の鉄筋と同じように力が流れるようにしています。
  • 帯筋で締め付ける:柱の周りには帯筋(フープ)、梁の周りにはあばら筋(スターラップ)という輪の形の鉄筋を巻きます。中のコンクリートを締め付けて、地震のときに柱が斜めに割れて一気に崩れる壊れ方(せん断破壊)を防ぎます。1968年の十勝沖地震で柱がこの壊れ方をする被害が相次いだことから、1971年に帯筋の間隔が狭く見直され、柱の上下端では10cm以下になりました。
  • 粘りを引き出す設計:鉄筋は伸びながら踏ん張る性質を持っていますが、それを建物の粘り(靭性)として生かすには、どこから先に壊れるかを設計で決めておく必要があります。いまの設計では、柱より梁が先に、しかも曲がるように壊れるよう鉄筋の量を調整し、地震のときに建物が急に崩れないようにしています。
  • かぶり厚さと密実なコンクリート:錆から守るアルカリ性は、時間とともに表面から失われていきます(後で説明する中性化)。そこで鉄筋の外側に一定の厚さのコンクリートを確保し、水の少ない詰まったコンクリートを打つことで、守る期間を延ばしています。

鉄筋コンクリートの弱点

  • 重い:鉄筋コンクリートは1㎥あたり約2.4トンあり、同じ体積の木材の5倍ほどです。重さは地震のときに建物を揺らす力になるので、柱や梁、基礎、杭もそれだけ太く、深くなります。
  • 中性化:コンクリートのアルカリ性は、空気中の二酸化炭素によって表面から少しずつ失われていきます。これを中性化と呼びます。中性化が鉄筋の位置まで進むと不動態皮膜が壊れ、鉄筋が錆びはじめます。錆びた鉄は膨らむので、周りのコンクリートを内側から押し割り、ひび割れや剥がれ落ちにつながります。
  • ひび割れが入る:引っ張りに弱いので、乾燥による縮みや温度の変化で細かなひび割れが入るのは避けられません。ひび割れから水や二酸化炭素が入ると、中性化と鉄筋の錆が早く進みます。

中性化への備えが、かぶり厚さです。鉄筋の表面からコンクリートの表面までの厚みのことで、建築基準法では床や構造上重要でない壁で2cm以上、柱・梁・耐力壁で3cm以上、土に接する部分で4cm以上、基礎で6cm以上と決められています。中性化の進み方は経過年数の平方根にほぼ比例するので、かぶりが2倍になると、中性化が鉄筋に届くまでの時間はおよそ4倍に延びます。

私が施工管理をしていた現場でも、コンクリートを流す前の配筋検査では、鉄筋と型枠の間にスケールを当てて、かぶり厚さを一か所ずつ確かめていました。コンクリートを流してしまえば二度と見えなくなり、後から直すこともできない部分だからです。

なぜマンションはRC造なのか

建物の構造には、主に次の4種類があります。

  • RC造(鉄筋コンクリート造):鉄筋コンクリートで柱・梁・床・壁をつくる。マンションの主流
  • S造(鉄骨造):鉄骨で骨組みをつくる。オフィスビル、工場、倉庫に多い
  • SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造):鉄骨の周りに鉄筋を組み、コンクリートで包む。以前は高層マンションで多かった
  • 木造:戸建やアパートの主流

マンションでRC造が選ばれる一番の理由は、重さが住み心地に効くことです。音は重いものほど通しにくいので、厚いコンクリートの床と壁は、上下左右の住戸の生活音をよく遮ります。重くて硬い建物は、風や人の歩行による揺れも出にくくなります。弱点だった重さが、住まいでは長所になります。燃えない材料なので、共同住宅に求められる耐火性能を満たしやすいことも理由の一つです。

S造は軽く、柱と柱の間を広く取れるのが長所ですが、揺れや音が伝わりやすく、住宅として使うには遮音の対策を別に重ねる必要があります。木造は遮音と耐火の面で、大規模な共同住宅には向きません。

SRC造は、かつて高層マンションの定番でした。その後、コンクリートを高い強度でつくる技術が進み、鉄骨を使わずRC造だけで超高層を建てられるようになりました。SRC造は鉄骨の工事と鉄筋・コンクリートの工事の両方が必要で、手間も費用もかかるため、いまのタワーマンションの多くはRC造です。

ラーメン構造と壁式構造

RC造の建物の組み立て方には、大きく分けてラーメン構造と壁式構造の2つがあります。

  • ラーメン構造:柱と梁をがっちり一体に固めた枠で建物を支える。ラーメンはドイツ語で「枠」という意味
  • 壁式構造:柱と梁のかわりに、壁と床の面で建物を支える

ラーメン構造と壁式構造の違い

壁式構造は、室内に柱や梁の出っ張りがなく、すっきりした部屋になるのが長所です。ただし建物を支える壁を抜いたり動かしたりできないので、間取りの変更が難しく、窓などの開口部も大きく取れません。高さにも制限があり、おおむね5階建て程度までの建物に限られます。

多くのマンションがラーメン構造なのは、高さの制限がなく、間取りの自由度が高いからです。室内の壁は建物を支えていないので、住戸の広さや間取りを自由に設計でき、リフォームで壁を取り払うこともできます。大きな窓やバルコニーも取りやすくなります。10階建てを超えるマンションやタワーマンションは、ほぼすべてラーメン構造です。

ラーメン構造の部屋では、柱や梁が室内に出っ張る部分(柱型・梁型)ができます。最近は柱を住戸の外側、バルコニー側に出すアウトフレームという設計で、室内をすっきりさせたマンションも増えています。

余談:コンクリートはなぜ固まるのか

私は大学院で、セメントと水の化学反応(水和反応)を研究していました。セメントは水と反応してC-S-Hという物質をつくり、これが粒のすき間を埋めてつながることで固まります。ここまでは教科書どおりですが、その先は意外と分かっていません。

  • C-S-Hがナノメートルの単位でどんな構造をしているのか、今も議論が続いている
  • 水を加えて数時間は反応がほとんど止まる理由も、長く議論されてきた
  • C-S-Hの粒どうしが何の力でくっつくのかは、2021年の論文でようやく、閉じ込められた水とイオンが生む電気の力が主因だと示された

発明から200年たち、毎日世界中で使われている材料でも、まだ謎が残っています。だから現場では理屈より結果で確かめます。打ち込むコンクリートで試験体をつくり、28日後に押しつぶして強さを確認しています。

(主な参考:建築基準法施行令第77条・第79条、日本建築学会「建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事」、Goyal et al.「The physics of cement cohesion」Science Advances(2021年)、Scrivener et al.「Advances in understanding cement hydration mechanisms」Cement and Concrete Research(2019年)。数値は代表的な目安です)