元大手ゼネコンの施工管理・ホームインスペクション100件超の立場から、 マンションの内覧でプロが見ている視点を公開するシリーズです。 第2回は、内覧会で実際によく出会う"施工の粗"と、その許容範囲の考え方

まず:粗はゼロにはなりません

100件見て、傷・汚れ・わずかな粗がまったく無い新築は一度もありませんでした。 人の手で造る以上、当然です。大切なのは「あるか/ないか」ではなく、 それが直すべき不良なのか、施工上どうしても出る許容範囲なのかの見極めです。

よく見つかる粗(マンション内覧会)

  • クロスの浮き・入隅の切れ:乾燥収縮で最も多い。軽微なら補修範囲
  • 床鳴り・わずかな不陸:歩くと"きしむ"。下地・根太まわり。程度により手直し
  • 建具の当たり・傾き:ドアや引戸がこすれる・閉まりきらない。調整で直ることが多い
  • コーキング(シーリング)の仕上げムラ:水回り・サッシまわり。防水に関わる部分は要チェック
  • コンセント/スイッチプレートの傾き:下地の丁寧さの表れ。是正は容易
  • 建具・枠の小傷、フローリングの当て傷:運搬・施工時のもの。気になれば指摘してよい
  • クロスやボード継ぎ目の段差:光の当たり方で目立つ。程度の判断が要る

「許容範囲」をどう考えるか

ここが本質です。施工には必ず公差(許容誤差)があります。 ミリ単位の完璧を 求めても、それは現実の施工では出ませんし、求めても直りません。 重要なのは、"仕方ない部分"だと言い切れること。これは施工現場を経験し、 是正工事の実際を知っていないと判断できません。

正直に言うと、指摘の数を「成果」として誇る業者ほど、施工経験が浅い傾向があります。 細かすぎる指摘は、施工会社との関係を悪くし、直らないものに不安を募らせるだけ。 プロの仕事は「粗を大量に挙げる」ことではなく、"直すべきもの"と"気にしなくていいもの"を 仕分けし、あなたを安心させることです。

買主側の指摘は「気になるなら、してよい」

一方で、買主が「気になる」と感じた傷・汚れは、遠慮なく指摘して構いません。 許容レベルは主観で、個人差が大きいものです。プロが"仕方ない"と判断するラインと、 あなたが"気になる"ラインは別。両方を踏まえて整理するのが良い内覧会です。

本当に見るべきは「直せるうちに直す」もの

内覧会の価値は、引渡し後だと直しにくいものを引渡し前に洗い出すことにあります。 特に防水・水回り・建具の作動・下地に起因する不陸は、後から気づくと厄介です。 逆に、暮らし始めれば気にならない微細な粗に時間を取られるのはもったいない。

この"仕分け"を一人でやるのは難しいものです。判断に迷いたくない、 安心して引渡しを受けたいという方は、プロと一緒に回るのが確実です。

※内覧・内覧会に一級建築士が同行する 内覧同行 も承っています。