元大手ゼネコンの施工管理・ホームインスペクション100件超の立場から、 マンションの内覧でプロが見ている視点を公開するシリーズです。 第3回は、内覧会で一番むずかしい「指摘して直る/直らない」の線引きについて。
チェック箇所より、"判断"のほうが難しい
チェックリストは調べれば出てきます。でも本当に難しいのは、 見つけた粗が「直すべき不良」なのか「施工上どうしても出る許容範囲」なのかの判断です。 ここを間違えると、直らないものに時間と神経をすり減らすことになります。
「直る」指摘の例
- 建具の当たり・傾き → 丁番やレールの調整で直る
- クロスの浮き・入隅の切れ → 補修・張り替えで直る
- コンセント/スイッチの傾き → 付け直しで直る
- 設備の初期不良(通水不良・作動不良)→ 交換・調整で直る
- 目立つ当て傷・汚れ → 補修・清掃で直る
これらは「引渡し前に直せるもの」。遠慮なく挙げて、書面で手直しを依頼しましょう。
「直らない/求めても意味が薄い」ものの例
- 施工公差の範囲内のわずかな不陸・段差(ミリ単位の完璧は現実には出ない)
- 材料の自然な色ムラ・木目の個体差
- 乾燥収縮で今後また出る微細なクロスの切れ(補修はできるが再発する)
- 構造・設計上そう造られている仕様("変えてほしい"は内覧会の趣旨と違う)
これらを"不良"として強く指摘しても、直らないか、直しても再発します。 「仕方ない部分だ」と言い切れるかどうか——ここに施工経験の有無が出ます。
なぜ施工経験者でないと言い切れないのか
意匠設計や構造設計にも一級建築士はいますが、現場で日々、品質管理者や行政の検査を 受けてきた施工管理者は、経験した"検査の数"が段違いです。 どこまでが許容で、どこからが是正対象か。是正工事の実際(どう直すか)まで イメージできるかが、判断の精度を分けます。 「施工会社側で内覧会対応をした」経験があれば、指摘される側の事情も分かるので、 なおさら現実的な線引きができます。
指摘の数を誇る業者に注意
正直に言えば、指摘の数を"成果"としてアピールする業者ほど要注意です。 細かすぎる指摘は、施工会社との関係を悪くし、直らないものへの不安を煽るだけ。 プロの価値は「たくさん挙げること」ではなく、"直すべきもの"に集中し、 "気にしなくていいもの"はそう言ってあげることにあります。
買主の「気になる」は別軸で尊重
とはいえ、あなたが気になった傷・汚れは、主観で指摘して構いません。 プロの"許容"ラインと、住む人の"気になる"ラインは別物。 両方を踏まえて整理するのが、後悔のない内覧会です。
この線引きを一人で判断するのは難しいものです。迷いたくない方は、 施工と是正の両方を知るプロと一緒に回るのが安心です。
※内覧・内覧会に一級建築士が同行する 内覧同行 も承っています。