元大手ゼネコンの施工管理として建物を"建てる側"を経験し、 ホームインスペクション(内覧会同行)は100件超。その立場から、マンションの内覧・内覧会で プロが実際に見ている視点を公開するシリーズです。第1回は、新築マンションの 内覧会チェックリストを、実際に見て回る順番で。
大前提:「完璧な家」はありません
先に本音を。傷・汚れが1つも無い新築は、100件見て一度もありませんでした。 建物は人の手で造られる以上、これは当然です。だから内覧会は「粗探しで施工会社を やり込める場」ではなく、引渡し前に直せるものを整理し、あとは新生活を気持ちよく 始めるための確認の場だと考えています。指摘の"数"を競うものではありません。
見て回る順番(プロの動線)
限られた時間で漏れなく見るには、動線を決めておくのがコツです。
- 玄関・共用廊下側:玄関ドアの開閉・建て付け、鍵、下枠の傷、インターホン
- 床:歩いてきしみ(床鳴り)・沈み・不陸(傾き・段差)を確認。フローリングの反り・隙間
- 壁・天井のクロス:浮き・剥がれ・入隅の切れ・ボードの継ぎ目の段差、汚れ
- 建具(ドア・引戸・クローゼット):全部開閉して、当たり・傾き・ラッチの掛かり
- 窓・サッシ・網戸:開閉のスムーズさ、鍵(クレセント)、レールの傷、結露対策
- 水回り(キッチン・浴室・洗面・トイレ):通水して水漏れ・排水、扉、コーキングの仕上げ
- 設備:コンセント・スイッチの傾き/作動、換気扇、給湯・追い焚き、分電盤
- バルコニー:防水の立ち上がり、排水ドレン、手すりのぐらつき、隔て板
- 採光・通風・眺望:最後に、実際の暮らしをイメージしながら
特にマンションで見落としやすい点
- 床の水平・建具の傾き:躯体や下地のわずかな狂いが、建具の当たりや床の段差に出ます
- サッシまわり・バルコニー防水:雨仕舞い(あまじまい)の要。将来の漏水リスクに直結
- コンセントやスイッチの傾き:小さいですが、下地施工の丁寧さが表れます
- 入隅・出隅のクロス:乾燥収縮で切れやすい。程度によって"許容範囲"の見極めが要る
記録の残し方が肝心
指摘は口頭で終わらせず、場所・内容を写真とメモで残すこと。マスキングテープで 現物に印を付け、指摘一覧を書面化してもらうと、手直し漏れとアフター保証の証跡になります。
「指摘していい/仕方ない」の線引きは、実は難しい
チェックリストで箇所は分かっても、それが"直すべき不良"か"施工上どうしても出る許容範囲"かの 判断が、実は一番難しいところです。ここは施工現場と是正工事の両方を知っていないと 言い切れません。過度な指摘は施工会社との関係を悪くし、かえって自分の不安を煽るだけです。
一人で全部を見て・判断するのは大変です。新生活を想像することに集中したい方、 判断に迷いたくない方は、プロと一緒に回るのが安心です。
※内覧・内覧会に一級建築士が同行する 内覧同行 も承っています。